古い車ほど「0W-20で燃費が良くなる」「省燃費が正義」と考えがちですが、それこそがエンジンへの“見えないコスト”を招いています。
旧型エンジンには、設計時の素材・精度・摩耗状況に応じた、確かな油膜を保てる高粘度オイル(例:10W-40)が必要です。適切な粘度の見直しは、整備士としての信頼を守り、業務の安全性・効率・経済性を実現する責務であることを断言します。
低粘度オイル過信がもたらす巨大なリスク
「燃費だけを追って、旧型エンジンに0W-20を使い続けると…」
オイル消費が増え、圧縮漏れ・白煙・異音といったトラブルにつながる可能性があります。
特に0W-20は、エンジンが設計された精度や材料が適合する仕様でなければ、油膜が薄すぎて高負荷時に保護性能が低下することがあります。これは高速走行・トレーラー牽引・山道などでは特に顕著です。
さらに旧型エンジンでは、合成油によるシール類の劣化のリスクも無視できません。鉱物油を選ぶことが推奨される理由もここにあります。
こうした管理不足は、「あのとき適切な粘度にしていれば…」という後悔を招き、修理費用や稼働ロスとして跳ね返る恐れがあります。

旧型エンジンには高粘度オイルで守るべき
旧型エンジンには油膜が厚く保てる粘度を持つオイル(例:10W-40、20W-50、鉱物油)を使うことが最も確実な対策です。これにより、油膜保持力が格段に改善し、摩耗・オイル漏れ・白煙などのトラブルリスクを抑制できます。
具体的には、ジャーナル間のクリアランスを満たし、圧縮効率や密封性能を安定させる役割も果たします。
旧型エンジン向けオイル選定ポイント
旧型車には、特に以下の特性を持つオイルが自然な解決策となります。
- 高粘度オイル(10W-40 や 20W-50):油膜保持力に優れ、高温・高負荷時でも潤滑性が持続。
- 鉱物油ベース:旧型エンジンのシールやパッキンに対する適合性が高い。
- 年式別推奨オイル:メンテナンス記録に基づいて選定することで、事故リスクを避ける。
旧型車での改善成果の想定ケース
このようなケースが想定されます。
状況描写
旧型トラック(20年落ち、走行24万キロ、0W-20を使用)が、燃費悪化・白煙・異音・月2Lのオイル消費増加という症状を抱えていました。
損失リスク
状況放置により、オイル交換費用・稼働停止・エンジン部品の摩耗による修理費などが年間数十万円にのぼる可能性があります。
改善施策
現場で、10W-40の高粘度鉱物油に切り替え、粘度管理を徹底した結果・・・
成果と対比
異音・白煙が消え、オイル消費が安定。圧縮効率回復により燃費も安定。修理費用の予測削減効果は数万円、休車期間ゼロ。
費用対効果
高粘度オイルのコスト上昇はわずか(月あたり1,000円未満)ですが、稼働損失・修理費回避により投資回収率は非常に高いと見込まれます。
(上記は一般的なパターンを想定しました)
「経験」から「数値とデータ重視」へシフト
本記事では、旧型エンジンにおける低粘度オイルの過信による「見えない損失」と、「高粘度オイルへの切り替え」による明確な改善効果を解説しました。
燃費偏重ではなく、油膜保持の観点から粘度設計の適合を見直すことが、整備品質向上・コスト抑制・安全改善に直結します。
「数値管理によるミスゼロ整備」へのステップ
まずは以下の5ステップから始めましょう:
- 旧型エンジンの使用状況・トラブル傾向を整理する
- メーカー推奨と実際の課題を照合し、粘度の見直しを検討
- 10W-40など、高粘度・鉱物油ベースのオイルを選定
- 交換後のオイル消費・圧縮・異音などを数値記録
- 継続効果を評価し、予防的な数値管理体制へ移行する
この記事を読み終えた今こそ、旧型エンジン守りの第一歩です。