エンジンオイルSPとSNの違い。トラブル91%削減(整備工場向け)

エンジンオイルSPとSNの違い。トラブル91%削減(整備工場向け)

目次

正直に申し上げます。私たちが整備工場の方々にヒアリングをする中で、最近こんな声をよく耳にします。

「お客様から『SP規格とSN規格って何が違うんですか』と聞かれて、うまく答えられなかった。で、そのお客様、結局ディーラーに行ってしまわれた」

これは単に1回のオイル交換代(数千円程度)を失っただけの話ではありません。失ったのは、今後10年間にわたる車検・整備・部品交換といった、推定数十万円規模の取引機会です。さらに、そのお客様からの紹介や、地域での評判という目に見えない損失も加わります。

今、カー用品店やディーラーでは、データを示しながら高品質オイルを提案するのが当たり前になっています。その中で「とりあえずSNで大丈夫ですよ」としか言えない工場は、確実にお客様を失いつつあるのが現実です。

あなたの工場では、お客様に「なぜSP規格が必要なのか」を、根拠を持って説明できているでしょうか。

この記事では、API(米国石油協会)の公式データに基づいて、SP規格とSN規格の性能差を具体的な数値で検証します。さらに、明日からすぐに実践できる具体的な導入プランと、よくある質問への回答もご用意しました。ぜひ最後までお読みください。

整備工場が直面している3つの深刻な課題

まず、現場で実際に起きている課題を整理しましょう。

課題1:説明できないことが、数十万円規模の機会損失につながる

「新しい規格です」「性能が良いです」だけでは、お客様は納得してくれません。今の時代、スマートフォンで調べればいくらでも情報が出てきます。専門家であるはずの整備士が、それ以上の情報を持っていないとなると、プロとしての信頼性に疑問を持たれてしまいます。

一度失った信頼を取り戻すのは困難です。お客様は他店に流れ、今後の車検や整備の機会も失われます。

課題2:ターボ車のLSPIトラブルが、工場の評判を直撃する

近年の小排気量ターボエンジンには、LSPI(低速早期着火)という異常燃焼のリスクがあります。もしこのトラブルでエンジンが損傷し、数十万円の修理が発生したとき、「あの工場でオイル交換をしたのに」と言われたら、評判に大きく影響します。

事前に適切なオイルを提案していたかどうかが、工場の責任として問われる時代になっています。

課題3:価格だけで比較され、技術力で勝負できない

「オイルなんてどれも同じでしょう」と思われ、安価なオイルの持ち込みや、価格だけでの比較をされてしまう。技術や知識で差別化したいのに、それを伝える手段がない。これが多くの工場が抱えているジレンマではないでしょうか。

本記事では、これらの課題を解決するための「データに基づいた説明方法」「実践的な導入プラン」「よくある質問への回答」をご提供します。

API SP規格とSN規格の性能差は、数値で明確に示せる

結論から申し上げます。API SP規格(2020年導入)は、API SN規格(2010年導入)と比較して、以下の性能向上が公式テストで確認されています。

これは単なるマイナーチェンジではありません。10年間の技術進化を反映し、7つの新しいテスト項目を導入した規格改定です。

中でも特に重要なのが、現代のターボエンジンが抱える「LSPI」への対策が、SP規格で初めて義務化されたという点です。SN規格にはこのテスト要件が存在しませんでした。

比較表にまとめると、以下のようになります。

評価項目 API SN規格 API SP規格
LSPI対策 テスト基準なし 平均5回以下に制限
酸化安定性 粘度増加150%まで 粘度増加100%まで
燃費性能 基準値 3〜4%改善
チェーン摩耗 テスト項目なし 50%以上削減


それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。

お客様への説明に使える3つのデータ

ここからは、実際の接客で使える具体的なデータを3つご紹介します。すべて公式機関が検証したデータですので、自信を持ってお客様に説明していただけます。

データ1:LSPI削減91%―ターボ車への必須提案

LSPI(Low Speed Pre-Ignition)は、低速・高負荷条件下で燃料混合気が異常着火する現象です。通常のシリンダー圧力は約500psi程度ですが、LSPIが発生すると1,000psi以上に達し、ピストンや連結棒の破損につながります。

API公式テスト(Sequence IX)では、SP規格オイルに対して「平均5回以下、最大でも8回以下のLSPI発生」という厳格な基準が設けられています。一方、SN規格にはこのテスト要件がありません。

出光興産が公表している公式データによると、同社のAPI SP認証オイルは、GF-6基準と比較して91%のLSPI削減を達成しています。

【想定される接客シーン ターボ車のお客様】

以下は、ターボ車のお客様への説明例です。実際の接客では、お客様の反応を見ながら調整してください。

「お客様のお車はターボ付きですね。実は最近、ターボエンジン特有のLSPIという異常燃焼で、エンジンにダメージが出るケースが増えているんです。修理となると数十万円かかってしまいます。最新のSP規格オイルは、このリスクを9割以上減らせることがメーカーの公式データで確認されています。少し価格は上がりますが、エンジンを守るための保険と考えていただければと思います」

データ2:燃費改善3〜4%  商用車・営業車への経済的訴求

燃費性能の向上も、お客様にとって分かりやすいメリットです。API公式試験(Sequence VIE/VIF)では、6つの異なる速度・トルク・温度条件で約197時間かけて燃料消費量を測定します。

日本のオイルメーカー、ミカドオイルの技術ブログによると、API SP規格オイルは標準的なAPI SNオイルと比較して、0W-16グレードで4.1%、5W-30グレードで3.1%の燃費改善を達成しています。

【試算例】商用車・営業車での経済効果

以下は一般的な条件での試算例です。実際の効果は、走行条件や車両によって異なります。
・年間走行距離:12,000km
・平均燃費:15km/リットル
・燃料価格:170円/リットル
・5W-30で3.1%改善の場合
 ↓
・年間燃料消費:800リットル
・年間燃料費:136,000円
・3.1%削減効果:約4,200円/年

※この試算は、上記条件での理論値です。実際の燃費は運転方法や気象条件により変動します。

【想定される接客シーン 商用車・営業車のお客様】

「営業でよくお使いになるんですね。それでしたら、SP規格オイルの燃費性能が効果を発揮すると思います。公式テストでは、従来のSNオイルと比べて3〜4%の燃費改善が確認されています。年間12,000km走られるとして試算すると、燃料費が年間4,200円ほど削減できる計算です。オイル代の差額は十分に回収できる見込みですね」

データ3:摩耗削減50%以上  高走行距離車への長期的価値提案

エンジンの耐久性も重要なポイントです。API SP規格では、トヨタ2NR-FE 1.5Lエンジンを使用したSequence IVBテストが新たに導入されました。このテストでは、200時間・24,000サイクルにわたって低温条件下でのエンジン摩耗を評価します。

合格基準は以下の通りです:
・平均吸気リフター体積損失:2.7mm³以下
・テスト終了時の鉄分量:400ppm以下

さらに注目すべきは、API SP専用のSequence Xテストで評価される、タイミングチェーン摩耗の50%以上削減です。

SN規格にはこのテスト項目自体が存在していませんでした。現代のエンジンは、定期交換の必要がないタイミングチェーンに依存しています。そのため、この摩耗削減効果は長期的なメンテナンスコストに直結します。

【想定される接客シーン 高走行距離車のお客様】

「走行距離が10万キロを超えていらっしゃいますね。それだけ大切にお乗りなら、エンジンを長持ちさせるSP規格オイルをお勧めします。最新の規格では、エンジン内部の摩耗を半分以下に抑えられることがテストで確認されています。特にタイミングチェーンの摩耗削減効果が高いので、将来の高額修理を避けられる可能性が高まります」

整備工場からよくある質問

ここからは、整備工場の方々から実際によく寄せられる質問と、その回答をご紹介します。

Q1. SN規格の在庫がまだたくさんあります。どうすればいいですか?

A. 無理に切り替える必要はありません。以下の優先順位で使い分けることをお勧めします:

  • ターボ車 → SP規格を優先提案(LSPI対策が必要)
  • 商用車・営業車 → SP規格を提案(燃費メリットを訴求)
  • 一般乗用車 → SN規格でも問題ないが、SP規格の選択肢も提示
  • 古い車両 → SN規格で十分対応可能

在庫を無駄にせず、段階的に移行できます。まずは出荷頻度の高い粘度グレード1種類から、SP規格を導入することをお勧めします。

Q2. お客様から「なんで今まで教えてくれなかったの?」と言われたら?

A. 正直に答えることをお勧めします:

「SP規格は2020年に導入された新しい規格で、私たちも最近になって詳しいデータが揃ってきたところなんです。今回しっかりと勉強しましたので、お客様に自信を持って提案できるようになりました」

誠実な対応が、かえって信頼を高めます。「常に最新情報を学んでいる工場」というイメージにもつながります。

Q3. 価格が高いと言われたら、どう切り返せばいいですか?

A. 記事内の燃費データを使いましょう:

「確かに数百円ほど高くなりますが、公式テストでは年間の燃費節約で3,700円ほどお得になる計算です(年間12,000km走行の場合)。つまり、実質的にはむしろ経済的なんですよ」

数字で示せば、納得していただきやすくなります。

Q4. スタッフに説明方法を共有するには?

A. この記事を印刷して配布し、以下の3つの数字だけ覚えてもらってください:

  • LSPI削減:91%
  • 燃費改善:3〜4%
  • 摩耗削減:50%以上

細かい技術的な話は不要です。この3つの数字と、お客様のタイプ別の説明例があれば、十分に提案できます。

Q5. 最初に何本くらい仕入れればいいですか?

A. まずは少量から始めることをお勧めします:

  • 初回発注:5〜10本(最も出荷頻度の高い粘度グレード1種類)
  • テスト期間:2〜4週間
  • 反応を見て追加発注

いきなり大量に仕入れる必要はありません。お客様の反応を確認しながら、段階的に在庫を増やしていくのが安全です。

明日から始める「SP規格提案」30日間導入プラン

ここからは、具体的な実践プランをご提案します。無理なく導入できるよう、30日間のステップに分けています。

【第1週:準備期間】

Day 1:スタッフミーティングで情報共有(15分)

  • この記事を印刷して配布
  • LSPI削減91%、燃費改善3〜4%、摩耗削減50%以上の3つの数字を共有
  • 「まずはターボ車のお客様に試してみよう」と方針を決める

Day 2~3:少量の試験仕入れ

  • えびすツールでSP規格オイルを発注
  • 在庫リスクを最小化

Day 4~7:お客様リストの作成

  • 今後2週間で来店予定の「ターボ車」「商用車」「10万km超」のお客様をリストアップ
  • カルテやメンテナンス記録を確認
  • 目標:5〜10名をリストアップ

【第2週:実践開始】

Day 8~14:説明を試す(目標:1日1名)

  • リストのお客様に、記事内の説明トークを使って提案
  • 無理に売り込む必要はなし。「こういう新しい規格があります」と情報提供するだけでOK
  • お客様の反応を記録:「興味あり」「保留」「不要」を分類

記録例:

日付 車種 反応 備考
Day 8 トヨタ・ターボ車 興味あり LSPI説明が刺さった
Day 9 商用車 保留 次回検討したい
Day 10 一般車 不要 価格優先


【第3週:改善と展開】

Day 15~17:成功パターンの共有

  • 反応の良かった説明方法をスタッフ間で共有
  • 「こう言ったら納得してもらえた」という事例を蓄積
  • うまくいかなかったケースも共有し、改善案を議論

Day 18~21:スタッフ全員が説明できるように

  • ロールプレイング形式で練習(1人5分程度でOK)
  • 3つの数字を使って、30秒で説明できるように練習
  • 自信を持って提案できる体制を整える

Day 22:追加発注の判断

  • 第2週の反応を見て、SP規格オイルを追加発注
  • 成約率が30%以上なら、在庫を増やす
  • 20%未満なら、説明方法を見直し

【第4週:本格展開】

Day 23~30:全てのターボ車・商用車に提案

  • もう「試験」ではなく、標準的な提案として展開
  • 目標:SP規格選択率30%以上
  • 週末にスタッフミーティングで振り返り

30日後の目標:

  • SP規格オイルの提案が「日常業務」になっている
  • スタッフ全員が自信を持って説明できる
  • お客様から「詳しいですね」と言われる回数が増える

このペースなら、無理なく導入できます。焦らず、1日1歩ずつ進めてください。

この提案方法を導入した場合の想定効果

以下は、上記の方法を実践した場合の想定シナリオです。実際の結果は、地域性や顧客層により異なります。

【想定される数値的変化】

前提条件:

  • 月間オイル交換件数:30件
  • 現在の平均客単価:3,500円
  • SP規格オイルへの切り替え率:30%と仮定
  • SP規格オイルの客単価:4,500円(+1,000円)

計算:

  • SP規格選択:30件 × 30% = 9件
  • 粗利増加:9件 × 1,000円 = 9,000円/月
  • 年間粗利増加:9,000円 × 12ヶ月 = 108,000円/年

※これはあくまで試算例です。実際の効果は、価格設定や地域性により変動します。

【想定される定性的変化】

以下は、この提案方法を継続的に実践した場合に期待できる変化です:

  • お客様から「この工場は詳しい」と評価される
  • スタッフが自信を持って提案できるようになる
  • 「技術で勝負できる工場」というポジショニングが確立される
  • ターボ車トラブルのリスクが軽減され、評判が守られる
  • 「安いだけの工場」との差別化が明確になる

これらは想定される効果であり、結果を保証するものではありません。継続的な実践と改善が必要です。

えびすツールが整備工場様に選ばれる理由

データに基づいた提案の重要性をご理解いただけたでしょうか。API SP規格は単なる新規格ではなく、エンジン保護、燃費、耐久性のすべてにおいて従来規格を大きく上回る性能を実現しています。

えびすツールでは、整備工場様向けに高品質なAPI SP規格対応エンジンオイルを取り揃えています。

整備工場様に選ばれる理由:

・お手頃な価格

高品質な100%化学合成油、SPグレードでありながら、非常に安価な価格でご提供。

・法人向けの決済対応

請求書払い・月末締めに対応しています。(Paidyを利用)

・迅速な配送体制

主要エリアでは平日11時までのご注文で翌日配送が可能です。急なオイル切れにも対応できるため、在庫リスクを最小化できます。

最初の一歩は、この記事を印刷することです

長文をお読みいただき、ありがとうございました。

最後に、具体的なアクションをお伝えします。この記事を印刷して、明日の朝、スタッフルームに貼ってください。それだけで、最初の一歩は完了です。

その後は、30日間プランに沿って、1日1歩ずつ進めてください。焦る必要はありません。


参考資料:

本記事は、以下の公開情報に基づいて作成しています。

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 また、ブログでは自動車整備や物流業界に携わる方々に役立つ情報をお届けしています。今後も有益な情報を継続的に発信してまいりますので、是非、お気に入り登録をお願いします。

この記事の執筆者 : 福塚鉄也(株式会社えびすツール 代表取締役)

 株式会社えびすツールの代表として、自動車整備用品や物流資材の通販専門サイト「えびすツール」公式ブログの記事を執筆しています。
 整備工場や運送業など法人や個人事業主のお客様に役立つ情報をわかりやすくお届けします。
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