記事を読めば、パーツクリーナーによるトラブルを回避し、適切な洗浄方法を選べるようになります。愛車のメンテナンスで失敗しないためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
パーツクリーナーでプラスチックが溶ける?使用NG素材とは
パーツクリーナーは、機械部品の油汚れやグリスを強力に落とす洗浄剤として、DIYやメンテナンス作業で広く使用されています。しかし、その強力な洗浄力ゆえに、プラスチック部品に使用すると変形や劣化を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
この章では、パーツクリーナーの成分や特性、そしてプラスチックへの影響について詳しく解説し、使用NG素材についてご紹介します。
パーツクリーナーとは
パーツクリーナーは、主に有機溶剤を主成分とした洗浄剤です。代表的な成分としては、ヘキサン、トルエン、キシレン、アセトンなどが挙げられます。これらの有機溶剤は、油汚れやグリスを素早く溶解する高い洗浄力を持ちますが、同時にプラスチックを溶かす、あるいは劣化させる可能性も秘めています。
パーツクリーナーの種類は、速乾性、洗浄力、引火性、安全性などを考慮して様々な製品が販売されています。
例えば、逆さ噴射可能なもの、ノズルが付属しているもの、ゴムや樹脂への影響が少ないとされるものなどがあります。用途や使用するパーツに合わせて適切な製品を選ぶことが重要です。
パーツクリーナーはプラスチックが溶けるため使用不可!
パーツクリーナーの主成分である有機溶剤は、多くのプラスチックに対して攻撃性を示します。特に、PS(ポリスチレン)、ABS樹脂、AS樹脂、スチロール樹脂などは、パーツクリーナーによって溶解したり、ひび割れたり、変形したりする可能性が高いです。
これらの素材で構成されたパーツには、パーツクリーナーを使用しないようにしましょう。パーツクリーナーを使用する前に、対象となるパーツの素材を確認することが非常に重要です。
パーツクリーナーがオススメできないパーツや素材
パーツクリーナーは、金属部品の洗浄には効果的ですが、プラスチック部品やゴム部品、塗装面などには使用を控えましょう。以下に、パーツクリーナーの使用を避けるべきパーツや素材をまとめました。
素材 | 影響 |
---|---|
PS(ポリスチレン) | 溶解、変形 |
ABS樹脂 | 溶解、変形、白化、ひび割れ |
AS樹脂 | 溶解、変形、白化、ひび割れ |
スチロール樹脂 | 溶解、変形 |
アクリル樹脂 | クラック、白濁 |
ポリカーボネート樹脂 | クラック、白濁 |
ゴム | 劣化、硬化、膨潤 |
塗装面 | 剥がれ、変色 |
プラスチックに使用する人もいるが自己責任
インターネット上では、プラスチック部品にパーツクリーナーを使用している事例も見られますが、これはあくまで自己責任の範囲で行われるべきです。
前述の通り、パーツクリーナーはプラスチックを溶かす可能性があり、思わぬ損傷を引き起こす可能性があります。特に、高価なパーツや重要な機能を持つパーツへの使用は避けるべきです。
どうしてもプラスチック部品を洗浄する必要がある場合は、中性洗剤を薄めた液や専用のクリーナーを使用するか、プラスチックへの影響が少ないとされるパーツクリーナーを、目立たない部分でテストしてから使用するなど、慎重な対応が必要です。安全を最優先に考え、リスクを理解した上で使用するようにしましょう。
ブレーキ&パーツクリーナーという製品名に要注意?
「ブレーキ&パーツクリーナー」という製品名を見ると、ブレーキ周りの洗浄に特化した製品で、その他の部品にも使用できる万能クリーナーのように思えるかもしれません。
しかし、実際にはその名前に潜む落とし穴が存在します。ブレーキ周りの洗浄に有効な成分は、他のパーツ、特にゴムやプラスチック、塗装面には悪影響を及ぼす可能性があるのです。
パーツクリーナーとブレーキパッドとの相性が×
ブレーキ&パーツクリーナーの中には、ブレーキダストや油汚れを強力に落とすために、特定の化学物質が含まれている場合があります。これらの化学物質は、ブレーキパッドの材質と相性が悪く、パッドの性能を低下させたり、寿命を縮めたりする可能性があります。
特に、ノンアスベスト系のブレーキパッドは、化学物質の影響を受けやすいと言われています。ブレーキパッドにパーツクリーナーを使用する際は、製品の成分表示をよく確認し、ブレーキパッドメーカーの推奨するクリーナーを使用することが重要です。
万が一、ブレーキパッドにパーツクリーナーが付着してしまった場合は、速やかに水で洗い流すようにしましょう。
ブレーキ&パーツクリーナーの使用推奨パーツは?
ブレーキ&パーツクリーナーの使用が推奨されるパーツは、主に金属製のブレーキ部品です。例えば、ブレーキキャリパー、ブレーキローター、ブレーキドラムなどが挙げられます。これらのパーツは、ブレーキダストや油汚れが付着しやすく、ブレーキ性能に影響を与える可能性があるため、定期的な洗浄が必要です。
ただし、ゴム製のパーツや塗装面には使用を控え、専用のクリーナーを使用するようにしましょう。
具体的な使用推奨パーツと注意点、代替クリーナーをまとめると以下のようになります。
パーツ | ブレーキ&パーツクリーナーの使用 | 注意点 | 代替クリーナー |
---|---|---|---|
ブレーキキャリパー | ○ | ゴム部品、塗装面への付着に注意 | ブレーキクリーナー |
ブレーキローター/ドラム | ○ | ブレーキパッドへの付着に注意 | ブレーキクリーナー |
ブレーキホース(金属製) | ○ | 接続部からの液漏れに注意 | ブレーキクリーナー |
ホイール(金属製) | △(材質による) | 塗装面、クリアコートへの影響に注意。アルミホイールの場合は変色する可能性も。 | ホイールクリーナー |
ブレーキパッド | × | パッドの材質によっては性能低下、寿命短縮の可能性あり | 中性洗剤、水 |
ゴム部品(ブーツ、シールなど) | × | 劣化、亀裂、膨潤の可能性あり | ゴム保護剤 |
塗装面 | × | 塗装剥げ、変色の可能性あり | カーシャンプー |
このように、「ブレーキ&パーツクリーナー」は、その名前から想像される以上に使用範囲が限定されます。使用する前に必ず対象物の材質を確認し、適切なクリーナーを選択することが重要です。ブレーキ周りの洗浄には、ブレーキクリーナーを使用することをおすすめします。
ブレーキクリーナーは、ブレーキ部品に特化して開発されており、ブレーキ性能への影響を最小限に抑えることができます。また、ゴムやプラスチックへの影響も少ないため、より安全に作業を行うことができます。
プラスチックの脱脂をしたい場合はどうする?
パーツクリーナーがプラスチックに適さないことがわかったところで、ではプラスチック部品の脱脂をしたい場合はどうすれば良いのでしょうか?
安全かつ効果的にプラスチックを脱脂する方法を解説します。
プラスチックの脱脂にはシリコンオフがオススメ
プラスチックの脱脂には、シリコンオフ(シリコンリムーバー)の使用がおすすめです。シリコンオフは、プラスチックをはじめ、ゴム、金属、塗装面など様々な素材に使用できる脱脂剤です。
主成分はヘキサンなどの炭化水素系溶剤で、油分やワックス、シリコンなどを効果的に除去します。速乾性も高く、作業効率が良いのもメリットです。カー用品店やホームセンターなどで手軽に入手できます。
シリコンオフを使用する際の注意点は、素材によっては変色や劣化の可能性があることです。目立たない場所でテストしてから使用することをおすすめします。また、換気を十分に行い、火気厳禁を守って作業してください。
パーツクリーナーとシリコンオフの違い
パーツクリーナーとシリコンオフはどちらも脱脂剤ですが、その成分や用途には違いがあります。以下の表にまとめました。
項目 | パーツクリーナー | シリコンオフ |
---|---|---|
主成分 | 有機溶剤(アセトン、トルエン、キシレンなど) | 炭化水素系溶剤(ヘキサンなど) |
用途 | 金属部品の油汚れ、グリス、ブレーキダストなどの除去 | プラスチック、ゴム、金属、塗装面の油分、ワックス、シリコンなどの除去 |
プラスチックへの影響 | 溶解、変色、劣化の可能性あり | 基本的に安全だが、素材によっては変色や劣化の可能性あり |
価格 | 比較的安価 | やや高価 |
入手性 | ホームセンター、カー用品店などで容易に入手可能 | ホームセンター、カー用品店などで容易に入手可能 |
前述の通り、パーツクリーナーは強力な洗浄力を持つ反面、プラスチックを溶かすリスクがあります。一方、シリコンオフはプラスチックにも比較的安全に使用できるため、プラスチック部品の脱脂にはシリコンオフが適しています。用途に合わせて適切な脱脂剤を選びましょう。
その他、プラスチックの脱脂には、中性洗剤を薄めたものや、無水エタノールなども使用できます。中性洗剤は油汚れを落とす効果があり、無水エタノールは樹脂を侵しにくい性質を持っています。
ただし、これらの方法も素材によっては変色や劣化の可能性があるため、目立たない場所でテストしてから使用することが重要です。また、脱脂後は、残留物がないようにしっかりと拭き取ってください。
パーツクリーナーでプラスチックが溶ける可能性あり
パーツクリーナーは油汚れを落とすのに非常に便利ですが、プラスチックに使用すると溶けたり変形したりする危険性があることが分かりました。これは、パーツクリーナーに含まれる強力な溶剤がプラスチックの成分を分解してしまうためです。ブレーキ周りのパーツクリーナーであっても、プラスチック部品に使用すると同様の危険があります。
パーツクリーナーは金属部品の洗浄には非常に効果的ですが、誤って使用してしまうと、部品の破損や思わぬ事故につながる可能性があります。
正しい知識を持って、適切なクリーナーを使用することで、安全かつ効果的に作業を進めることができるでしょう。