
ラッシングベルトの締め方は知っている。でも走り出してから荷物がずれていた、あるいはベルトが緩んでいたという経験がある方は、手順のどこかに抜けがあるかもしれません。
この記事では、カム式とラチェット式それぞれの締め方・緩め方を手順ごとに解説します。さらに「何本かける?」「どこにかける?」という、手順の先にある配置と本数の判断基準まで掘り下げます。
カム式とラチェット式、どちらを使えばいいか
ラッシングベルトには大きく分けてカム式とラチェット式の2種類があります。手順を覚える前に、自分が使っている道具がどちらなのかを確認してください。構造が違うので、操作の手順もまったく異なります。

カム式はこういう場面で使う
カム式は、バックル内部のカム(偏心した回転体)にベルトを通して引くだけで固定できる構造です。操作がシンプルで、慣れれば数秒で締められます。
向いているのは、荷物が比較的軽い場合や、引越し・配送のように積み下ろしが頻繁な作業です。重量物の長距離輸送には向きません。
ラチェット式はこういう場面で使う
ラチェット式は、バックルに歯車とハンドルが付いた構造で、ハンドルを往復させることでベルトを巻き取っていきます。少ない力で強く締め付けられるのが特徴で、走行中の振動や急ブレーキにも対応できる固定力があります。
トラック輸送・長距離運搬・重量物の固定など、確実な固定が求められる場面で使います。解除に少し手間がかかるため頻繁な積み下ろしには向きませんが、迷ったらラチェット式を選んでください。固定力が高く、カム式で代用できない場面はあってもその逆はほぼありません。
💡 以降の手順解説はラチェット式を中心に進めます。カム式の手順は次のセクションで解説します。
カム式の使い方
カム式はシンプルな構造ですが、「引いただけ」で終わりにすると走行中に緩む原因になります。正しい手順とよくある失敗を確認してください。
締め方の手順
STEP 1 フックを固定ポイントにかける
ベルト両端のフックを、荷台のレールや床フックにかけます。フックの開口部が、走行中に力がかかる方向を向いていないか確認してください。
STEP 2 ベルトをバックルに通す
バックルのカム部分を開き、ベルトの先端を下から通します。ねじれていないことを確認してから通してください。
STEP 3 ベルトを引いてたるみをとる
ベルトの端を引っ張り、荷物との間のたるみをできる限りなくします。この工程を省くとカムで固定しても荷物が動く余裕が残ります。急いでいても省かないでください。
STEP 4 バックルを倒してロックする
カムを荷物側に倒すようにしてバックルを閉じます。カチッと音がすればロック完了です。最後にベルトを手で引っ張って固定を確認してください。
緩め方・外し方
バックルのカムを起こす方向に引き上げると、ロックが解除されてベルトが緩みます。勢いよく外れることがあるので、荷物側に人がいないことを確認してから操作してください。
カム式でよくある失敗
- バックルを倒すだけで、たるみをとる工程を省いてしまう→荷物が動く余裕が残る
- ロックのカチッという感触を確認せずに終わる→走行中に自然に解除されることがある
- ベルトがねじれたまま通してしまう→固定力が落ち、ベルトが傷みやすくなる
ラチェット式の使い方(締め方)
ラチェット式は手順を守らないと、何度ハンドルを動かしても締まらなかったり、走行中に緩んだりします。

STEP 1:ベルトをバックルに通す
バックルのハンドルを開いた状態にします。巻き取り側のベルトの先端を、回転軸の下から通して折り返し、上側の隙間をくぐらせます。
⚠️ ベルトの通す向きを間違えると、ハンドルを動かしてもベルトが巻き取られません。「下から通して折り返す」の順番を守ってください。
すでにベルトがバックルに通っている状態で届く製品はこの工程を省けます。ただし使用を繰り返すうちにベルトが抜けることがあるので、使用前に毎回確認してください。
STEP 2:フックを固定ポイントにかける
ベルト両端のフックを、荷台のラッシングレールまたは床フックにかけます。このとき、バックルのハンドル部分が荷物の外側(作業する自分の側)に向くように全体の向きを調整してください。
⚠️ ハンドルが荷物側(内側)を向いていると、締め付け作業のためのスペースがとれません。必ず外向きにセットしてください。
STEP 3:手でたるみをとってからハンドルを動かす
バックルを開いた状態のまま、巻き取り側のベルトの端を手で引っ張り、たるみを手作業でできる限りなくします。
この工程を省いてハンドルを動かし始めると、1往復で巻き取れる量がわずかなため、締まるまでに何十回もハンドルを動かす必要が生じます。「何回やっても締まらない」と感じる場合、ほぼ全員がこの工程を省いています。
💡 手でたるみをとるひと手間が、後のハンドル操作の回数を大幅に減らします。省かないでください。
STEP 4:ハンドルを往復させて締め上げる
ハンドルを上下に往復させると、歯車がベルトを少しずつ巻き取って張力が上がっていきます。荷物がしっかり固定されて動かなくなるまで締め続けます。
締めすぎると荷物を傷める原因になります。「ベルトを手で揺すっても緩みや遊びを感じない状態」になったら止めてください。精密機器・塗装面・柔らかい素材の荷物には緩衝材を挟んでからベルトをかけてください。
STEP 5:ハンドルを閉じてロックする
十分に締めたら、ハンドルをバックル本体に密着するまで倒して閉じます。ラチェット機構がロックされ、ベルトが緩まない状態になります。
⚠️ ハンドルを閉じずに走行すると、振動でロックが外れてベルトが一気に緩むことがあります。閉じたあとに手でベルトを一度引っ張って、固定されていることを必ず確認してください。
ラチェット式の緩め方・外し方
ラチェット式は締める方向には強いですが、外すときに手順を間違えると「どうやっても緩まない」状態になることがあります。
解除レバーの操作
バックル上部にある解除レバー(リリースレバー)を引きながら、ハンドルを180度開きます。ラチェット機構のロックが外れ、ベルトが緩められる状態になります。
ロックが外れたら、巻き取り側のベルトを引き抜くか荷物から離れる方向に引っ張って張力を抜いてください。その後、フックを固定ポイントから外して完了です。
⚠️ 解除レバーを引かずにハンドルを無理に動かそうとすると、ラチェット機構が破損します。必ず解除レバーを引いてからハンドルを操作してください。
📄 緩め方・外し方の詳しい手順と、「どうしても外れない」ときの対処法は「ラッシングベルトの外し方(使い方)間違えは危険!注意点と手順を紹介」の記事をご覧ください。
何本かける?どこにかける?配置と本数の判断基準
手順を正しく踏んでいても、本数が少なかったり配置が悪かったりすると荷崩れは起きます。「とりあえず2本」で済ませているなら、ここで基準を確認してください。
荷物の重さ別・推奨本数の目安
| 荷物の重量目安 | 推奨本数 | 考え方 |
|---|---|---|
| 500kg未満 | 最低2本 | 前後の動きと左右の動きを1本ずつ抑える |
| 500〜1,000kg | 最低4本 | 対角線上に2本ずつ、前後左右を均等に抑える |
| 1,000kg超 | 4本以上 | 重量と荷物の形状に応じて増やす。専門家に確認を |
「最低2本」は業界の基本ルールです。ベルト1本では、もう一方向からの荷重(横ズレ・回転)に対応できません。どんなに軽い荷物でも、前後と横の両方向に1本ずつかけてください。
💡 ベルトの本数と合わせて、1本あたりの耐荷重も確認してください。耐荷重の読み方は「ラッシングベルトの耐荷重:最大限に活用するための知識」の記事で詳しく解説しています。
かける位置の基本ルール
- 荷物の重心より低い位置にかける:高い位置にかけると、荷物が転倒方向に力を受けたときにベルトがずり上がって固定が外れやすくなります。
- 対角線上に2本かけると安定する:同じ方向に2本並べるより、X字になるように対角線でかける方が前後・左右の両方向の動きを抑えられます。
- フックの開口部は外側または上向きにセットする:開口部が走行中に力がかかる方向(前方・荷物側)を向いていると、振動で外れるリスクがあります。
- ベルトをかける角度は45〜60度が理想:垂直に近いほど上向きの力が強くなり、荷物を押さえる力が弱まります。斜めにかけることで荷物を床に押しつける力が働きます。

積み荷の形状別・配置の考え方
【板状・平板な荷物(鋼材・木材・パネルなど)】
長手方向の両端にそれぞれ1本ずつかけるのが基本です。荷物が長い場合は中間にも追加し、1本あたりの担当長さが2m以内になるように本数を調整します。
【箱状の荷物(機械・家電・梱包品など)】
天面を通してX字にかける方法が最も安定します。荷物の角にベルトが当たる場合は、角当てプロテクターか段ボールの切れ端を挟んで荷物を保護してください。
【円筒形の荷物(ドラム缶・パイプ・ロールなど)】
転がり防止のために、荷物の左右に楔(くさび)や歯止めを置いたうえでベルトをかけます。ベルトだけでは転がる方向への力に対応できないので、歯止めとセットで使ってください。

📄 ベルトが外れる・緩む原因については「ラッシングベルトが外れる原因と緩みを防ぐ方法」の記事もあわせて確認してください。
使用前の点検と保管方法
ラッシングベルトは消耗品です。見た目に問題がなくても、繰り返しの使用や保管環境によって強度が落ちていることがあります。使う前の確認を習慣にしてください。
使用前に必ず確認する3点

異常が見つかったものは補修して使うのではなく、新品に交換してください。ラッシングベルトが切れたり外れたりしたときに荷物を止めるものは他にありません。「まだ使えそう」という判断が事故につながります。
⚠️ 特にベルトのほつれと金具の変形は、外見では軽微に見えても強度が大幅に低下していることがあります。少しでも異常を感じたら交換してください。
保管時の注意点
- 直射日光・高温多湿を避ける:ポリエステル製ベルトは紫外線と熱で強度が低下します。車内への放置は避け、日陰の室内で保管してください。
- 薬品・油脂類との接触を避ける:強酸・強アルカリ・有機溶剤はベルトの繊維を侵します。オイルや洗浄剤が付着した場合は水で洗い流してよく乾かしてください。
- ねじれたまま保管しない:クセがついて次回使用時に正しく通せなくなります。
📄 使用後の余ったベルトのまとめ方・収納方法は「ラッシングベルトの余った部分の処理方法と綺麗なまとめ方」の記事で詳しく解説しています。
まとめ
ラッシングベルトの使い方で失敗しやすいのは、手順の理解不足より「たるみをとらずにハンドルを動かす」「本数が少ない」「ハンドルを閉じ忘れる」という作業の習慣の問題です。
毎回同じ順番で確認する。それだけで防げる荷崩れがほとんどです。本数と配置は荷物の重量・形状によって変わるので、「とりあえず2本」ではなく積む荷物に合わせて判断してください。
えびすツールでは、ラチェット式のさまざまなラッシングベルトを取り扱っています。使用頻度や荷物の重量に合ったものをお探しの方は、ラインナップを一度ご覧ください。

















































