スリングベルトは、工場や建設現場などで荷物を吊り上げる際に使用する、安全な作業には欠かせない道具ですが、「スリングベルトってどうやって使うの?」「玉掛け作業って難しそう…」と感じていませんか?
スリングベルトを使った玉掛けの基本から、安全に作業を行うための注意点まで、分かりやすく解説。さらに、ワイヤーロープスリングやチェーンスリングなど、他の種類の吊り具の特徴も紹介します。
この記事を読めば、スリングベルトを使った玉掛け作業の全体像が理解でき、安全な作業手順を習得できます。ぜひ最後まで読んで、安全な作業に役立ててください!
スリングベルトの玉掛け方法を解説!
引用:えびすツール
実は近年、労働災害の中でも「墜落・転落」や「飛来・落下」といった事故の割合は増加傾向にあります。厚生労働省が公表している「令和3年度における労働災害発生状況」によると、休業4日以上の死傷災害の約25%を占めています。
このような事故を防ぐためには、スリングベルトなど作業現場で使用する道具の正しい知識を身につけ、安全に作業を行うことが何よりも重要です。
そこで今回は、現場作業で荷物の吊り上げに使用するスリングベルトの正しい「玉掛け方法」について詳しく解説していきます。
そもそも「玉掛け」とは
「玉掛け」とは、クレーンなどの機械を用いて荷物を吊り上げる際に、荷とつり具を接続する作業のことです。具体的には、ワイヤーロープやチェーン、ベルトなどを用いて、荷物を安全につり上げられるように、適切な方法で結びつける作業を指します。
玉掛けは、安全かつ確実に行わなければ荷物の落下などの重大な事故に繋がる可能性があり、作業を行うには資格と豊富な経験が必要となります。そのため、重量物を扱う現場では、専門の資格を持った「玉掛け技能講習」修了者が作業を行うことが義務付けられています。
スリングベルトとは
「スリングベルト」とは、クレーンなどの吊り上げ機械を用いて荷物を吊り上げる際に使用する、繊維製のベルト状の吊り具のことです。比較的軽量で柔軟性が高く、扱いやすいことから、様々な現場で幅広く使用されています。
また、材質や構造によって様々な種類があり、荷物の形状や重量、作業環境に合わせて適切なものを選択する必要があります。
スリングベルトはどんな時に使用する?
スリングベルトは、以下のような特徴を持つことから、様々な現場で使用されています。
- 軽量で柔軟性があり、扱いやすい
- 荷物を傷つけにくい
- 耐薬品性、耐腐食性に優れている
- 価格が比較的安い
具体的には、以下のような現場で多く使用されています。
- 建設現場
- 工場
- 倉庫
- 運送業
スリングベルトを使用しての玉掛け方法を手順で紹介!
スリングベルトを使用して安全に玉掛けを行うための手順は以下の通りです。
1. スリングベルトの選定
玉掛けを行う前に、まず荷物の重量、形状、吊り上げ方法などに適したスリングベルトを選定する必要があります。特に、荷物の重量に適した「安全荷重」を満たしているかどうかの確認は必須です。
安全荷重とは、スリングベルトが安全に吊り上げられる荷物の最大重量を示したもので、スリングベルト本体に表示されています。荷物の重量に対して安全荷重が不足している場合は、絶対に使用しないでください。
安全荷重は、玉掛け方法によって異なります。例えば、スリングベルトを1本で使用する場合と、2本をチョーク掛けで使用する場合では、安全荷重が変わってきます。そのため、事前に使用する玉掛け方法における安全荷重を確認しておくことが重要です。
玉掛け方法 | 安全荷重 |
---|---|
1本吊り | W |
2本吊り(チョーク掛け) | W × 0.82 |
2本吊り(並列吊り) | W × 2 |
※Wはスリングベルト1本の安全荷重を表す
2. スリングベルトの状態確認
使用するスリングベルトを選定したら、必ず以下の項目について点検を行いましょう。少しでも異常が見られる場合は、使用を中止してください。
- 摩耗、傷、破断がないか
- 変形、腐食、変色などがないか
- 縫製部分のほつれや糸切れがないか
- 表示ラベルの文字が消えていないか
3. 玉掛け作業
スリングベルトの状態に問題がないことを確認したら、いよいよ玉掛け作業に入ります。荷物の形状や重量に合わせて、適切な方法でスリングベルトを掛けましょう。荷物の重心が偏らないように、バランスよく吊り上げることが重要です。
また、スリングベルトがねじれたり、鋭利な部分に接触したりしないように注意しましょう。
4. 吊り上げ作業
玉掛け作業が完了したら、クレーンなどを操作して、ゆっくりと荷物を吊り上げていきます。吊り上げ中は、周囲に人がいないことを確認し、荷物が振れたり、落下したりしないように注意しながら作業を行いましょう。
また、荷物を吊り上げた後は、速やかに目的地へ移動し、ゆっくりと荷物を降ろします。
スリングベルトの玉掛け時の注意点
スリングベルトを使用して玉掛け作業を行う際には、以下の点に注意することが重要です。
- 荷物の重量や形状に適したスリングベルトを選定する
- スリングベルトの安全荷重を超えて使用しない
- 使用前に必ず点検を行う
- スリングベルトを傷つけないように丁寧に扱う
- 高温多湿な場所や直射日光の当たる場所での保管は避ける
- 定期的に交換する
これらの注意事項をしっかり守ることで、安全で確実な玉掛け作業を行うことができます。
しかし、玉掛け作業は危険を伴う作業であることを常に認識し、安全に作業を行うために、必要な資格を取得する、熟練者の指導を受けるなど、安全対策を徹底することが重要です。
スリング(吊り具)の種類3選も紹介!
玉掛け作業に使用する吊り具であるスリングには、さまざまな種類があります。それぞれの特徴を踏まえて、作業内容や環境に適したスリングを選ぶことが大切です。ここでは、代表的なスリングの種類を3つ解説します。
スリング種類①ワイヤーロープスリング
ワイヤーロープスリングは、複数本のワイヤーロープを束ねて、両端にループ(アイ)を形成したスリングです。高い強度と耐久性を持ち、高温や薬品への耐性にも優れているため、過酷な環境下での使用に適しています。
ワイヤーロープスリングの特徴
- 非常に高い強度を持つ
- 耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れている
- 使用荷重が分かりやすい
ワイヤーロープスリングの用途
- 重量物の吊り上げ、運搬
- 高温環境での作業
- 化学薬品を使用する場所での作業
ワイヤーロープスリングの注意点
- 自重が重い
- キンクや素線切れに注意が必要
- 腐食しやすい
スリング種類②繊維スリング(スリングベルト)
繊維スリングは、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維で作られたベルト状のスリングです。軽量で柔軟性があり、扱いやすいため、幅広い現場で使用されています。また、傷つきやすい荷物にも優しく、吊り荷へのダメージを抑えられます。
繊維スリング(スリングベルト)の特徴
- 軽量で扱いやすい
- 柔軟性があり、吊り荷にフィットしやすい
- 吊り荷を傷つけにくい
- 価格が比較的安価
繊維スリング(スリングベルト)の種類
繊維スリングには、さまざまな種類があります。主な種類と特徴は以下の通りです。
種類 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
ベルトスリング | 最も一般的な繊維スリング。軽量で扱いやすく、幅広い用途で使用される。 | 一般吊り作業、精密機械の搬入など |
ラウンドスリング | 筒状に縫製されたスリング。吊り荷との接触面積が大きく、安定性に優れる。 | 重量物の吊り上げ、反転作業など |
エンドレススリング | 輪状に縫製されたスリング。吊り荷に直接掛けて使用できるため、作業効率が良い。 | 重量物の吊り上げ、運搬など |
繊維スリング(スリングベルト)の注意点
- 耐熱性、耐薬品性が低い
- 紫外線による劣化に注意が必要
- 鋭利な角を持つ荷物に使用すると切断の恐れがある
スリング種類③チェーンスリング
チェーンスリングは、金属製のチェーンを連結して、両端にフックなどの金具を取り付けたスリングです。非常に高い強度と耐久性を持ち、高温や衝撃にも強いため、過酷な環境下での使用に適しています。
チェーンスリングの特徴
- 非常に高い強度を持つ
- 耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性に優れている
- 鋭利なエッジを持つ荷物にも使用できる
チェーンスリングの種類
チェーンスリングには、主に以下の3つの種類があります。
- 1本吊りチェーンスリング:チェーンが1本のシンプルな構造。軽量で扱いやすい。
- 2本吊りチェーンスリング:チェーンが2本で構成され、安定性に優れる。重量物の吊り上げに適している。
- 4本吊りチェーンスリング:チェーンが4本で構成され、さらに安定性が高い。大型重量物の吊り上げに適している。
チェーンスリングの注意点
- 自重が重い
- 取り扱いが粗雑だと、吊り荷や作業者に損傷を与える可能性がある
- 腐食しやすい
玉掛け時に使用するスリング以外の用具も紹介!
安全かつ効率的に玉掛け作業を行うためには、スリングベルト以外にもさまざまな用具が必要となります。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。
連結金具
スリングベルトと吊り荷、あるいは複数のスリングベルト同士を連結するために使用するのが連結金具です。用途や負荷重量に応じて、さまざまな種類があります。
シャックル
U字型の金具にピンを通して開閉するタイプの連結金具です。種類が豊富で、さまざまなサイズや形状、材質のものがあります。比較的安価で汎用性が高いですが、ねじ込み式のピンを使用するタイプは緩みに注意が必要です。
フック
先端が鉤状になっており、吊り荷やスリングベルトなどを引っ掛けて使用します。シャックルと同様に、さまざまな種類があります。荷重がかかると口が開くタイプや、回転するタイプなど、用途に合わせて適切なものを選ぶことが重要です。
アイボルト
吊り荷側にねじ込んで使用する、リング状の頭部を持つボルトです。吊り荷に直接引っ掛ける場所がない場合などに使用します。材質や強度が明確になっているものを選び、正しくねじ込まれていることを確認することが重要です。
吊り天秤
複数のスリングベルトをバランスよく吊り下げるために使用する用具です。吊り荷の形状や重量に合わせて、適切なものを選ぶ必要があります。
スプレッダービーム
2点以上の吊り点を持つ横長の梁で、複数のスリングベルトを均等に分散させて吊り荷を安定させます。大型の吊り荷や、バランスが取りにくい形状の吊り荷を吊り上げる際に特に有効です。
イコライザービーム
スプレッダービームの一種で、スリングベルトの長さの違いを自動的に調整する機能があります。これにより、吊り荷にかかる荷重を均等に保ち、安定した吊り上げ作業が可能になります。複数のスリングベルトを使用する際に便利です。
保護具
玉掛け作業は、荷崩れや落下など危険を伴う作業です。作業者の安全を確保するため、以下の保護具を必ず着用しましょう。
- 安全帽
- 安全靴
- 革手袋
状況によっては、以下の保護具も必要となります。
- 保護メガネ
- 防塵マスク
- 安全帯
スリングベルトでの玉掛け方法をマスターして活用しよう
今回は、現場作業に欠かせないスリングベルトの玉掛け方法について解説しました。安全な作業のためには、荷物の形状や重量に適したスリングベルトの種類を選び、正しい玉掛け方法を習得することが重要です。紹介した手順や注意点を参考に、安全な作業を心がけましょう。
また、玉掛け作業は危険を伴うため、作業前に必ず点検を行い、安全荷重を守ることが大切です。不安な場合は、専門知識を持った人に相談するなどして、事故防止に努めましょう!