エンジンオイルの値段の違いは品質差?価格差の真実と賢い選び方

エンジンオイルの値段の違いは品質差?価格差の真実と賢い選び方

目次

先日、知人がディーラーでオイル交換をしてきた帰り道、こう言いました。

「また1万円かかった。高いよな...」

レシートを見せてもらうと、オイル代7,000円、工賃3,000円。彼は「車のことはよく分からないから、ディーラーなら安心だし」と言いますが、本当にそうでしょうか。

その夜、試しにネットで「エンジンオイル 価格」と検索してみました。すると、同じAPI規格のオイルが4L缶で2,400円で販売されています。(API規格=アメリカ石油協会(API:American Petroleum Institute)が定めた、エンジンオイルの世界共通の性能基準。)

計算すると、年2回の交換で年間約12,000円、10年で12万円の差。この金額、決して小さくありません。タイヤ交換ができる金額です。バッテリーも買い替えられます。

整備工場や運送会社であれば、この差額はさらに大きくなります。月間200L使用する整備工場なら、年間で数百万円のコスト削減が可能です。

この記事では、エンジンオイルの価格差の真実と、安全に賢く選ぶ方法を解説します。

エンジンオイルの価格差、その約8割は性能と無関係

結論から言います。6,000円のオイルと2,400円のオイル、価格差の大部分は性能の違いではありません。

カー用品店で6,000円のエンジンオイル(4L缶)を手に取ったとき、その内訳はおよそこうなっています。

製造原価は約1,600円(推定値)。では残りの4,400円は?流通コストとブランド料です。性能を左右する製造コストは、全体の3割程度に過ぎません。

一方、ネット通販で売られる2,400円のノンブランドオイルの場合、製造原価は約1,600円。流通コストは800円程度です。

つまり、こういうことです。高価格品より低価格品の製造コストはほぼ同じ。この事実に気づいている人は、意外と少ないのではないでしょうか。

なぜ同じ性能なのに、価格が2.5倍違うのか

流通経路の違いが価格を決める

大手ブランド品が消費者の手に届くまでには、多くの中間業者が関わります。

工場(1,600円)から始まり、輸入代理店、商社、問屋、カー用品店と経由するたびに、それぞれが10〜30%の利益を上乗せします。最終的に6,000円。製造原価の約4倍です。

直販モデルの場合、工場から直接ネット通販で消費者に届きます。中間マージンがないため、同じ製造コストでも消費者価格は半額以下になります。

広告宣伝費は商品価格に含まれている

有名ブランドのテレビCM制作費、モータースポーツのスポンサー料。これらは年間で数億円規模になることもあります。当然、この費用は商品価格に転嫁されます。

メーカー純正オイルの正体

自動車メーカーの純正オイルの多くは、実は専門メーカーへの外注製造です。同じ工場で、同じ設備で、同じ原料を使って作られていても、ディーラーで「純正」ラベルが付くと価格は2倍になることも珍しくありません。

「安いオイルは不安」という疑問について

ここまで読んで、こう思われた方もいるでしょう。「でも、安いオイルでエンジンが壊れたら怖い」。

そこで重要になるのが「規格」という考え方です。

エンジンオイルには国際的な品質基準があります。API規格(米国石油協会)とILSAC規格(日米自動車工業会)です。

最新のAPI SP / ILSAC GF-6A規格に適合している製品であれば、価格に関わらず以下の性能が保証されます。

  • エンジン保護性能
  • 燃費性能
  • 清浄性能
  • 酸化安定性
  • 低温始動性

規格が同じなら、6,000円のオイルも2,400円のオイルも、基本性能は同等です。

実際、多くの整備工場がノンブランドオイルを使用していますが、トラブル報告はほとんどありません。コストと品質のバランスを最も重視するプロが選んでいる。これは一つの判断材料になるでしょう。

ただし、避けるべき製品もあります。API/ILSAC規格の表示がない製品、製造元が不明な製品、極端に安すぎる製品は、規格不適合の可能性があります。

一般ドライバーの方へ:持ち込みオイル交換の完全マニュアル

「持ち込みオイル交換ってどうやるの?」という方のために、初めてでも失敗しない手順を解説します。

ステップ1:車の推奨オイル規格を確認(所要時間:3分)

車の取扱説明書、または給油口の裏に記載されています。推奨粘度(5W-30、0W-20など)、推奨規格(API SN以上など)、必要量(通常3.5〜4.5L)を確認します。

分からない場合は、車検証の「型式」をメモして、ネットで「[型式] エンジンオイル 規格」と検索してください。

ステップ2:オイルを購入(所要時間:5分)

ネット通販で、確認した規格に適合するオイルを購入します。

選ぶポイントは、API SP または ILSAC GF-6A の表示があるか、製造元が明記されているか、レビュー評価が高いもの。初めての方は4L缶1本(2,000〜3,000円程度)で十分です。

ステップ3:持ち込みOKの整備工場を探す(所要時間:10分)

Googleマップで「自宅住所 + オイル交換」と検索。出てきた整備工場に電話します。

「すみません、オイルの持ち込み交換はやっていますか?」

ほとんどの工場が対応しています。工賃は1,000〜2,000円程度です。「規格が合っているか不安なんですが...」と言えば、整備士さんが確認してくれます。

ステップ4:交換当日(所要時間:20〜30分)

購入したオイル缶を持って、予約した整備工場へ。受付で「持ち込みオイル交換をお願いします」と伝えます。待合室で待つこと20〜30分。交換完了です。

工賃1,500円、オイル代2,400円(自分で購入済み)、合計3,900円。ディーラーなら1万円かかるところが、4,000円以下。6,000円以上の節約です。

よくある不安に答えます

本当に断られませんか?

99%の工場が対応しています。万が一断られても、他を当たれば大丈夫です。

オイルを間違えて買ってしまったら?

未開封なら返品できるショップが多いです。購入前に返品ポリシーを確認しましょう。

交換後に不具合が出たらどうしよう?

規格が適合していれば、不具合はまず起こりません。実際、全国の整備工場で毎日何千台もの車が同じ方法でオイル交換されており、規格適合オイルでのトラブル報告はほとんどありません。不安な場合は、交換前に整備士さんに規格が合っているか確認してもらえば安心です。

整備工場の購買担当者様へ:仕入れ先変更の実務ガイド

現状の仕入れコストを正確に把握する

まず月間使用量を記録してください。軽自動車用(0W-20)、普通車用(5W-30)、ディーゼル用(5W-40)。それぞれ何リットル使っているか。

現在の仕入れ単価(1リットルあたり)を確認します。4L缶で仕入れている場合、実は割高になっているケースが多いです。

計算例:月間使用量200L × 現在の仕入れ単価1,100円 = 月間220,000円。年間では264万円の仕入れコストです。

代替品の選定と試験導入

いきなり全量切り替えはリスクがあります。まずは1〜2ヶ月分の少量発注で試験導入してください。

確認項目

  • API/ILSAC規格が適合しているか
  • 納期は安定しているか(欠品リスク)
  • 最低発注ロットは現実的か
  • 支払条件(掛け払い可能か)
  • 配送料は含まれているか

顧客への説明方法

「オイルが安くなりました」だけでは、顧客は不安になります。

推奨トーク:「当店では、API SP規格の高品質オイルを採用しています。有名ブランドと同等の品質で、コストパフォーマンスに優れた製品です。これにより、お客様への料金も抑えることができております」

価格を下げすぎると「安かろう悪かろう」と思われます。適正な利益率を確保しつつ、競合より若干安い設定が理想です。

利益率改善シミュレーション

現状

  • 仕入れ:1,100円/L
  • 販売:1,500円/L
  • 粗利:400円/L(利益率26.7%)

改善後

  • 仕入れ:580円/L
  • 販売:1,300円/L(顧客にも還元)
  • 粗利:720円/L(利益率55.4%)

月間200L販売の場合、月間粗利が8万円から14.4万円に。月間6.4万円、年間76.8万円の利益改善です。この増益分で、設備投資や従業員待遇改善が可能になります。

実際に切り替えた人たちの声

一般ドライバーの事例

通勤で毎日車を使い、年2回ディーラーでオイル交換をしていました。毎回1万円。

ある日、同僚から「持ち込みオイル交換って知ってる?」と聞かれて調べ始めました。API SP規格のノンブランドオイルを2,400円で購入し、近所の整備工場に持ち込み。工賃は1,500円でした。

「最初は不安でしたが、整備士さんに『規格が合っていれば問題ないですよ。うちも業務で使ってます』と言われて安心しました」

1回あたり3,900円。従来より6,100円の削減。年間で約12,000円、10年で12万円

整備工場での導入事例

「最初は正直、不安だった。お客さんに何か言われたらどうしようって。でも、うちのメカニックが"規格が同じなら問題ないっスよ"って言うんで、試しに自分の車で2ヶ月使ってみたんです。全く問題なし。エンジン音も変わらない。それで本格導入を決めました」

「切り替えて最初の月、お客さんに聞かれましたよ。"オイル変えた?安くなったけど大丈夫?"って。"API SPっていう最新規格で、有名ブランドと品質は同じです。だから料金も抑えられました"って説明したら、"そうなんだ、ありがとう"って」

「今は、むしろお客さんから"安くなって助かる"って言われます。浮いたお金で、最新のエンジン診断機を買えた。これが大きい。診断精度が上がって、仕事の質も上がりました」

その後、オイル関連のトラブルは一切ないとのことす。月間使用量800Lで、年間約500万円のコスト削減を実現しているそうです。

運送会社での活用

「それまでは4L缶を1リットルあたり1,100円で買ってました。年間使用量800Lで計算すると、年間88万円。これが20Lペール缶に変えたら、1リットル474円。年間約38万円。差額50万円です」

「ただ、最初は現場から反発がありました。"今までので問題ないのに、なんで変えるんだ"って。でも規格表を見せて、"性能は同じです。この浮いた50万円、ボーナスに回せますよ"って言ったら、みんな納得してくれました」

失敗事例から学ぶ:こんな選び方はNG

ケース1:規格表示が曖昧な格安品を選んで失敗

ある整備工場が、ネットで見つけた格安オイルを試験導入しました。
商品説明には「API SP相当」「高性能オイル」と書かれていましたが、実際の缶には正式な「API SP」の認証マークがなく、「相当品」としか記載されていませんでした。

「相当なら大丈夫だろう」と判断したのが失敗の始まりです。

使用開始から1ヶ月後、複数の顧客から「エンジン音がうるさくなった」とクレーム。
オイルを抜いて確認したところ、著しく劣化していました。

「相当」という表現は、実際には規格試験をクリアしていない製品でも使用できる曖昧な表現だったのです。結局、全車オイル交換をやり直し。信用も費用も失いました。

教訓:「API SP相当」ではなく、正式な「API SP」認証品を選ぶこと。製品レビューがない、または評価が極端に低い製品は避けること。

ケース2:在庫を抱えすぎて劣化

コスト削減を急いだある運送会社が、20Lペール缶を一度に50缶発注しました。しかし実際の使用ペースは月3缶程度。

1年半後、残っていたオイルを使ったところ、始動性が悪くなる車が続出。保管状態が悪く(直射日光が当たる倉庫)、オイルが劣化していたのです。

教訓:使用ペースに合った発注を。オイルは冷暗所で保管すること。

よくいただく質問

規格が合っていれば本当に性能は同じですか?

はい。API規格は、エンジン保護、燃費、清浄性など、すべての性能について厳格な試験をクリアした製品のみに与えられます。規格が同じであれば、基本性能に差はありません。

メーカー保証に影響しませんか?

適合規格の製品を使用していれば、メーカー保証に影響しません。ただし、交換記録(レシートなど)は必ず保管してください。

20Lペール缶の保管場所がないのですが

4L缶でも十分コストメリットはあります。無理にペール缶にする必要はありません。保管スペースに合わせて選んでください。

整備工場が持ち込みを嫌がる理由は?

工場側の利益が減るからです。ただし、工賃で利益を確保できれば問題ありません。事前に工賃を確認することをお勧めします。

まとめ

エンジンオイルの価格差の大部分は、性能とは無関係です。流通コストとブランド料が主な要因になっています。

選ぶときのポイントは4つあります。

  1. 規格の確認(API SP / ILSAC GF-6A など最新規格に適合)
  2. 製造元の確認(パッケージに明記されているか)
  3. 年間コストでの比較(単価だけでなくトータルで見る)
  4. プロの選択を参考にすること(整備工場が使っている製品は信頼できる)

今使っているオイルの規格を一度確認してみてください。そして年間のオイル代を計算してみてください。思っている以上に、節約できる可能性があるかもしれません。


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この記事の執筆者 : 福塚鉄也(株式会社えびすツール 代表取締役)

 株式会社えびすツールの代表として、自動車整備用品や物流資材の通販専門サイト「えびすツール」公式ブログの記事を執筆しています。
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