ホームセンターの棚にシリコンオフとパーツクリーナーが並んでいる。どちらも「脱脂・洗浄」と書いてある。作業内容によって使い分けが必要なのはわかっていても、どっちを選べばいいのか判断しにくい製品です。
両者は成分も揮発性も用途も異なります。間違えると塗装が剥がれたり、樹脂パーツが変形したりします。作業の目的と素材を確認してから選んでください。
📄 パーツクリーナーと脱脂の詳しい関係については「パーツクリーナーで脱脂できる?シリコンオフとの決定的違いとは」もあわせてご覧ください。
脱脂スプレーとは何か
脱脂スプレーとは、金属・樹脂・塗装面などに付着した油分・ワックス・シリコン・グリスを除去するスプレー製品の総称です。塗装・コーティング・接着・溶接など、あらゆる表面処理の下地工程として使われます。
表面に油分が残っていると塗料やコーティング剤が密着しません。剥がれ・ムラ・気泡の原因になり、作業をやり直す羽目になります。接着剤も同様で、油分があると接着強度が大幅に落ちます。
💡 脱脂は「汚れを落とす」作業ではなく「油分ゼロの状態にする」作業です。見た目がきれいでも油分は残っていることがあります。
脱脂スプレーの主な種類と特徴
市販されている脱脂スプレーは大きく3種類に分かれます。それぞれ成分・得意な用途・苦手な素材が異なります。
| 種類 | 主成分 | 得意な用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| パーツクリーナー | 石油系溶剤(非塩素系/塩素系) | 金属パーツの油汚れ・グリス除去 | ゴム・樹脂・塗装面に使えない製品が多い |
| シリコンオフ | 石油系溶剤+アルコール系 | 塗装・コーティング前の下地処理 | 金属の頑固なグリスには力不足のことも |
| アルコール系脱脂剤 | IPA(イソプロピルアルコール)等 | 内装・ガラス・デリケートな素材 | 油性の強いグリスには効果が薄い |

パーツクリーナー
整備現場で最もよく使われる脱脂スプレーです。揮発性が高く、金属パーツについたグリス・エンジンオイル・ブレーキダストを素早く溶かして飛ばします。水を使わずに作業でき、乾燥待ちもほぼ不要です。
ゴムや樹脂パーツには使えない製品が多いのが弱点です。製品によっては素材を溶かしたり膨張させたりします。購入前に「ゴム・樹脂OK」の表記を確認してください。塗装前の下地処理には揮発が速すぎるため、シリコンオフの方が向いています。
📄 パーツクリーナーの詳しい選び方は「パーツクリーナーは洗浄力で選べ!失敗しない選び方ガイド」をご覧ください。
シリコンオフ
塗装・コーティングの下地処理に特化した脱脂剤です。油分だけでなくワックスやシリコン系のコーティング剤も除去できるのがパーツクリーナーとの大きな違いです。揮発がやや遅めなので、ウエスで拭き広げながら使えます。樹脂・プラスチックにも使えるよう設計された製品が多く、バンパーやピラーの塗装前処理にも対応できます。
アルコール系脱脂剤
IPA(イソプロピルアルコール)を主成分とした脱脂剤です。3種類の中で素材への攻撃性が最も低く、内装パーツ・ガラス・両面テープの貼り付け前処理など、強溶剤を使いたくない箇所に向いています。ただし油性の強いグリスや長期間放置した油汚れには効果が薄いです。整備用途よりもカーケア・DIY用途がメインです。
作業目的別の選び方一覧
作業内容によって選ぶ製品が変わります。以下の表を手元に置いて判断基準にしてください。
| 作業の目的 | 推奨する脱脂スプレー | 理由 |
|---|---|---|
| ブレーキパーツ・金属パーツの洗浄 | パーツクリーナー | 強力な溶解力でグリス・ブレーキダストを素早く除去 |
| 塗装・補修前の下地処理(金属) | シリコンオフ | ワックス・シリコンまで除去。揮発が適度で拭き取りやすい |
| 塗装・補修前の下地処理(樹脂・バンパー) | シリコンオフ(樹脂対応品) | パーツクリーナーは樹脂を傷める可能性がある |
| コーティング剤施工前の下地処理 | シリコンオフ | コーティング密着のためシリコン除去まで必要 |
| 両面テープ・ステッカーの貼り付け前 | シリコンオフ またはアルコール系 | 軽い脱脂で十分。アルコール系は素材へのリスクが低い |
| 内装パーツ・ガラスの脱脂 | アルコール系脱脂剤 | 素材への攻撃性が低い。強溶剤は内装素材を傷める |
| 溶接前の金属面の脱脂 | パーツクリーナー | 強力に油分を除去。速乾性が溶接作業と相性が良い |
💡 金属の洗浄はパーツクリーナー、塗装・コーティング前はシリコンオフ、内装・樹脂・ガラスはアルコール系。この3パターンを頭に入れておくと現場での迷いが減ります。

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パーツクリーナーは脱脂スプレーとして使えるか
パーツクリーナーは脱脂力が高いので「塗装前の脱脂にも使えるのでは」と考える方がいます。使える場面と使えない場面があるので、作業内容で判断してください。

使える場面
- 金属面の塗装前処理(鉄・アルミ・ステンレス):揮発が速く素材残りがないため、金属面への塗装前脱脂に適しています
- 溶接前の油分除去:速乾性が作業の流れと合います
- ブレーキパーツの脱脂:多くの製品でブレーキクリーナーと同等に使えます
使えない場面
- 樹脂・プラスチック・ゴムへの塗装前処理:素材が変色・変形・溶解するリスクがあります。「樹脂OK」表記のある製品に限定してください
- コーティング施工前:ワックスやシリコン成分はシリコンオフでないと取りきれないことがあります
- 内装・ガラス周辺:強溶剤が接着剤や内装素材を傷めます
⚠️ パーツクリーナーを使う前に、製品ラベルの「使用できない素材」を確認してください。特に塩素系タイプはゴム・プラスチックへのダメージが大きいです。
📄 パーツクリーナーで脱脂してOKな場面・NGな場面の詳細は「パーツクリーナーで脱脂OK・NGの場面一覧|作業別の正しい使い分け」をご覧ください。
脱脂スプレーの正しい使い方
基本の手順(パーツクリーナー・シリコンオフ共通)

STEP 1 素材を確認する
使う脱脂スプレーが対象素材(金属・樹脂・ゴム・塗装面)に対応しているか確認します。ここを省くと後で取り返しがつかなくなります。
STEP 2 大きな汚れを先に落とす
泥・砂・厚いグリスが残っている状態で脱脂スプレーを使っても、油分を表面に広げるだけです。ウエスで粗拭きしてから使ってください。
STEP 3 スプレーして清潔なウエスで拭き取る
脱脂スプレーを吹き付け、清潔なウエスで拭き取ります。重要なのは「清潔な面」を使い続けることです。同じウエスで広範囲を拭き続けると、油分を再付着させます。1パネルごとにウエスの面を変えてください。コーティング施工前など脱脂の精度が求められる作業では、複数枚用意して1枚使いきりにするのが確実です。
STEP 4 完全に乾いてから次の工程へ
パーツクリーナーは数十秒〜1分で揮発します。シリコンオフは2〜5分が目安です。溶剤が残ったまま塗装・コーティング・接着に進むと密着不良の原因になります。
⚠️ 脱脂スプレーは引火性のある製品がほとんどです。火気のある場所での使用・保管は絶対に避けてください。換気が不十分な室内での使用は溶剤蒸気を吸い込む危険があります。
まとめ
金属パーツの洗浄にはパーツクリーナー、塗装・コーティング前にはシリコンオフ、内装や樹脂など素材へのリスクを避けたい場面にはアルコール系を選んでください。
3種類の中でパーツクリーナーは最もコスパよく整備作業に使えます。ただし素材を選ぶ製品なので、ゴム・樹脂・塗装面に使う前は必ず製品ラベルを確認してください。
えびすツールのパーツクリーナーは、ISO9001・ISO14001認証工場で製造された業務用グレードの製品です。速乾性に優れ逆さ向きでも噴射できるため、エンジン下部や狭い箇所の金属パーツ洗浄・溶接前脱脂にそのまま使えます。840mLの大容量タイプで、整備頻度が高い方や工場での業務使用にコストを抑えながら対応できます。脱脂スプレー3種の中でパーツクリーナーが最もコスパよく使える場面が多いため、まず1本手元に置いておくと作業の幅が広がります。
















































