ステンレスの磨き剤は、「表面の仕上げ」と「汚れの種類」の2つで選びます。鏡面のマフラーや金具なら、粒子の細かい液体研磨剤。細い筋模様(ヘアライン)のシンクに鏡面用の磨き剤を使うと、筋模様が消えてしまいます。マフラーの焼け色は、色が濃いものほど研磨剤だけでは落ちにくくなります。
使うものは、下の早見表①で「仕上げ×汚れ」の組み合わせを見れば決まります。
ステンレスの磨き剤は「仕上げ」と「汚れ」で選ぶ
まず仕上げを見分ける

- 鏡面仕上げ:顔や景色がはっきり映り込む。バイクのマフラーやトラックの装飾パーツなどに使われる
- ヘアライン仕上げ:一方向に細い筋が入っている。家庭のシンクや厨房機器などに使われる
- ツヤ消し・エンボス仕上げ:映り込みがなく、ざらっとしている、または凹凸の模様がある
光を斜めに当てると、細い線が一方向にそろって見えます。これがヘアラインです。迷ったら、目立たない場所で試してから全体に進めてください。
汚れの種類で使うものが変わる
シンクの白いくもりは、水あかや石けんカスが原因のことが多く、ほかに油汚れやもらいサビもあります。マフラーなら、泥・排気のすすと焼け色。缶や鉄の道具から移るサビを「もらいサビ」と呼びます。硬いものでついた擦り傷も、くすみの原因になります。
研磨剤を使うのは、くすみ・軽い焼け・細かな傷に限られます。水あかや油汚れは、先に洗剤で落とした方が早く、表面も削らずに済みます。
【早見表①】仕上げ×汚れ別 使うもの・使わないもの
| 汚れの種類 | 鏡面仕上げ(マフラー・装飾パーツ) | ヘアライン・ツヤ消し(シンク・厨房機器) |
|---|---|---|
| 指紋・油膜・軽いくすみ | 中性洗剤で洗ったあと、微粒子の液体研磨剤 | 中性洗剤か重曹を使い、筋目に沿って洗う |
| 水あか・石けんカス | クエン酸など酸性の洗剤で浮かせてから、仕上げに磨く | クエン酸などで浮かせ、筋目に沿ってこする |
| もらいサビ | 原因の金属を取り除き、液体研磨剤で軽く磨く | メラミンスポンジで筋目に沿って軽くこする |
| 焼け色(薄い) | 液体研磨剤で試す(薄くなる場合がある) | 研磨すると筋目が消えるため、手を出さない |
| 焼け色(濃い) | 磨き剤だけでは落ちにくい。焼け取り専用剤か業者 | 業者に相談する |
| 擦り傷 | 浅い傷は液体研磨剤。深い傷は研磨のやり直しになる | 筋目の再現が必要なため、業者に相談する |
どの仕上げでも、塩素系漂白剤・スチールウール・硬いタワシは使いません。塩素系は表面の膜を傷めてサビの原因になります。スチールウールは、削れた鉄粉がもらいサビになります。
磨き剤のタイプ別の違い
ピカール エクストラのラベル裏面には、「とくにステンレスに効果大!」と大きく書かれています。ところが同じラベルの「使用に適さないもの」には、ヘアライン・ツヤ消し等の特殊な表面処理が並んでいます。
【早見表②】タイプ別 研磨の強さと向く仕上げ
| タイプ | 研磨の強さ | 向く仕上げ | 得意な汚れ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 液体研磨剤(液体コンパウンド) | 弱〜中(微粒子) | 鏡面 | くすみ・軽い焼け・細かな傷 | ヘアラインには使えない。ピカール エクストラは火気厳禁 |
| クリームタイプの金属磨き | 中 | 鏡面 | くすみ・変色 | ヘアラインには使えない。ブルーマジックは臭いが強め |
| クリームクレンザー | 製品による(粒子の粗いものがある) | ヘアライン(筋目に沿って) | 石けんカス・こびりつき | 粒子の粗いものは、鏡面を傷つけてくもらせるおそれ |
| 酸性洗浄剤(クエン酸など) | なし(溶かして落とす) | 製品の対象による | 水あか・白ぼけ | 放置すると変色する。すすぎが必須 |
| 焼け取り専用剤 | 酸+研磨 | 鏡面のマフラー | 焼け色 | 塗装面・アルミに付けない。手袋が必須 |
液体研磨剤の粒子の細かさは「番手」で表し、数字が大きいほど細かくなります。製品ごとの目安は、ピカールの番手と粒径の目安にまとめました。
当店の2製品は、アルマイト処理のアルミや金メッキには使えません。ステンレス以外の金属も磨くなら、金属磨きの選び方と素材別の判断基準
当店で扱う金属磨きは、液体タイプのピカール エクストラと、クリームタイプのブルーマジックの2製品です。2製品の累計販売数は3,000本以上で、売れ方はそれぞれ約5割です。
ただ、購入者レビュー216件のうち、ステンレスのマフラー・部品・台所まわりに触れたものは14件でした。ホイールやトラックの外装に使うお客様が中心で、ステンレスだけを目的に買われているわけではありません。
バイクのステンレスマフラーの磨き方と焼け色の限界
マフラーで最初に見極めたいのは、落としたいのが「汚れ」か「焼け色」かです。
焼け色の正体は、熱でできた酸化被膜

焼け色は汚れではなく、排気の熱でステンレスの表面が酸化してできた薄い膜(酸化被膜)です。膜が厚くなるにつれて、色は代表的には薄い黄色から茶色、赤紫、青へと変わっていきます。
泥・油膜・排気のすすは、表面に乗っているだけなので磨けば落ちます。焼け色は、素材の表面そのものの変化。落とすには、膜ごと削るか、薬剤で溶かすかの二択です。
磨きで薄くなる焼け・落ちない焼けの見分け方

一般に、焼けは色が濃いものほど磨き剤だけでは落ちにくくなります。どこまで落ちるかは焼けの状態で変わるため、実際に試して判断します。
判断は、目立たない場所で数回磨いて決めます。ウエスの黒い汚れは回を追うごとに減るのに、色だけが残る。それは汚れではなく焼けです。数回磨いて色が変わらなければ、磨き剤の限界です。そこで力を入れ続けても、細かな傷が増えるだけです。
当店のレビューに、ステンレスマフラーの汚れ落としにブルーマジックを使った方の声があります。最初の2〜3回は表面の汚れが落ちる程度で、5〜6回目から落ち始め、最終的にきれいに仕上がったそうです。同じ方も、サビについては「厳しいと思います」と書いています。
焼け取り専用剤を使うときの注意
濃い焼け色には、焼け取り専用剤を使う手もあります。酸で膜を溶かし、研磨剤で磨く製品です。ピカールのブランドにもステンレスマフラー専用品があります(当店では扱っていません)。
酸を含むので、塗装面・アルミ部品・メッキ面など、製品の表示で使用不可とされている部分には付けないこと、保護手袋をして作業することが前提です。使ったあとの拭き取りや水洗いは、製品の指示に従ってください。チタンマフラーには使えない製品もあるため、対応素材は必ず製品の表示で確認してください。
磨く前後の注意
- エンジンを止め、マフラーが完全に冷えてから作業する(走行直後は重いやけどのおそれ)
- カーシャンプーなどで泥と油を落とし、水分を拭き取る
- 液体研磨剤を柔らかい布に付けて磨く
- 別の乾いた布で、研磨剤を残さず拭き取る
細かい溝や隙間に入ると拭き取れないことがあるため、溝には塗り込まず、つなぎ目の拭き残しに注意してください。細かなコツは、ピカールの使い方の3手順と拭き取りのコツで解説しています。
「普通のピカールよりも粒子が細かいので、綺麗に仕上がりました」。マフラー磨きにピカール エクストラを選んだお客様のレビューです。同じ方は「少量つけるだけで十分です」とも書いています。ステンレス部品に使った方からは、「少し乾かしてから拭き上げると綺麗に拭き取れる気がします」という声もありました。
ピカール エクストラは、ラベルの「使用に適するもの」の筆頭にステンレスが挙がっている液体研磨剤です。番手の目安は#8000、平均粒径は0.8〜1μm。ヘアライン・ツヤ消しの仕上げや塗装面には使えず、磨いたあとの保護被膜も残りません。火気厳禁の危険物(第四類第三石油類)でもあるため、換気のよい場所で、保護手袋をして作業してください。
磨いてはいけないマフラー
見た目がステンレスと似ていて間違えやすいのが、チタン製です。製品によっては焼き色を意図して付けたものがあり、研磨剤で磨くと焼け色が落ちて風合いが変わります。ほかに、焼き色加工品・耐熱塗装品、素材や表面処理がわからないものも磨かないでください。クロームメッキのマフラーには、焼け取り専用剤や粗い研磨剤は使いません。
キッチンシンク・厨房のステンレスの磨き方
家庭や厨房のシンクには、ヘアライン仕上げのものがよくあります。仕上げは製品によって違うため、まず見分けてください。
ヘアラインのシンクに鏡面用の磨き剤を使ってはいけない理由

ヘアラインの細い筋は、傷ではなく意図して付けた模様です。微粒子の研磨剤で円を描くように磨くと、筋が消え、そこだけ光ってまだらになります。ピカール エクストラもブルーマジックも、ヘアライン・ツヤ消し仕上げを使用不可としています。
消えた筋は磨き剤では戻せず、筋目を付け直す研磨が必要になります。
水あか・石けんカス・くすみは、研磨より先に洗剤で落とす
シンクの白いくもりは、削るより溶かす方が確実です。水あかや石けんカスはクエン酸などの酸性洗剤で浮かせ、油汚れやぬめりは中性洗剤か重曹で落とします。どちらもスポンジで筋目に沿ってこすり、水でよくすすいでから、乾いた布で水気を拭き取ります。酸性の洗剤に限らず、洗剤のすすぎ残しはサビや変色の原因になります。
当店で扱うハイトレールも酸性の洗剤ですが、車輌用です。シンクには使わないでください。
食品が直接触れる面には使わない
当店では、ピカール エクストラを、食器・調理器具・まな板を置く面には使わないようお伝えしています。ラベルで、吸入・飲用しないよう注意されている製品だからです。
洗剤でくもりが取れず、ヘアラインの傷みも目立つなら、ステンレスの研磨業者に相談した方が確実にきれいになります。
トラックのステンレス架装は「洗浄→磨き」の2段階

ハイトレールのラベルには、対象車として保冷車・タンクローリー・ダンプカーなどが並び、落とせる汚れとしてステンレスの水あかや、海水などの塩分による白ぼけが書かれています。広い面は、先にこうした洗浄剤で水あかやさびを落とし、必要な部分だけ磨き剤で仕上げる方法もあります。ハイトレールのラベルにも、ステンレスの表面が白くなった場合は研磨剤を使えばきれいに仕上がると書かれています。
- ステンレスの箇所は10倍以上に薄める
- 鏡面加工したステンレス・アルミ・ガラス・塗装箇所には使わない
- 塗布したまま2分以上放置せず、2分以内に大量の水で洗い流す
- スプレーボトルは使わず、ハケ・スポンジ・布で塗る。炎天下や車体が熱いときは使わない
- ゴム手袋をする。塩素系など他の洗剤と混ぜない
希釈の手順と使える素材は、ハイトレールの正しい使い方で詳しく解説しています。ハイトレールとブルーマジックのセットは、累計700件を超える注文をいただいています。
ステンレス磨きのよくある失敗と、購入前の注意点
元に戻せない失敗から順に挙げます。
- ヘアラインのシンクを鏡面用の磨き剤で磨き、筋が消えてまだらになった
- 焼け色を力任せに磨き続け、傷だらけになった
- 電動工具で1か所を磨き続け、摩擦熱で新たな焼けを出した
- 塩素系漂白剤を使い、変色やサビが出た
- スチールウールでこすり、もらいサビが出た(早めなら、原因を取り除いてこすれば落とせることが多い)
- 研磨剤を拭き残して白くくもった(乾いた布で拭き直せば戻る)
電動工具について、当店のレビューに「グラインダーの回転を下げて研磨焼けに注意すれば安心して使えます」という声があります。回転を落とし、同じ場所に当て続けないことが基本です。
購入前に知っておいてほしい点もあります。ブルーマジックはアンモニア系の成分を含み、臭いが強めです。部屋の中で開けるのは避けた方がいい、というレビューもありました。ピカール エクストラには「やっぱり拭き取りが難しく大変苦労しました」という声があり、ブルーマジックでマフラーを磨いた方も根気が要ったと書いています。ルーフレールに使って効果を感じなかったという低評価もあります。
使い終わったウエスは、捨て方に気をつけてください。東京消防庁は、油が染み込んだ布や紙を丸めたり重ねたりして放置すると、自然発火することがあると案内しています。この案内の主な対象は動植物油です。当店では念のため、ピカール エクストラを拭き取ったウエスは、水に浸してから処分することをおすすめしています。
ピカールはどれを選ぶ?エクストラと焼け取り専用品の違い
「ピカール ステンレス」で調べると、同じブランドの製品がいくつも出てきます。ピカール エクストラは、ステンレスのくすみ・軽い焼け・細かな傷を磨いてツヤを出す液体研磨剤です。これに対して、ステンレスマフラー専用の焼け落とし剤は、酸と研磨剤でマフラーの焼け色を落とすための製品です。当店で扱っているのはエクストラだけです。濃い焼け色を落とすのが目的なら、専用品の方が早く終わります。
クリームタイプのブルーマジックも、パッケージの対応金属にステンレスが入っています。エクストラとの大きな違いは、磨いたあとにシリコン被膜が残ること。被膜で水をはじかせたいならブルーマジックです。ステンレスの車両装飾に使ったお客様からは、「軽く擦るだけで水滴跡、クスミが取れます」というレビューが届いています。
2製品の違いは、ピカールとブルーマジックの違いと金属別の使い分けで詳しく比較しています。ブルーマジックも、ヘアライン・ツヤ消し・塗装面には使えません。
よくある質問
焼けが薄いうちは、ピカール エクストラで薄くなることがあります。色が濃い焼けほど磨き剤だけでは落ちにくいため、目立たない場所で数回試してください。色が変わらなければ、焼け取り専用剤か研磨業者を検討してください。
細い筋模様(ヘアライン)のシンクには使えません。筋が消えてまだらになります。シンクの水あかや石けんカスは、クエン酸などの洗剤で落とすのが基本です。食品が直接触れる面にも使わないでください。
たいていは研磨剤の拭き残しです。別の乾いた柔らかい布で、全体をもう一度拭き上げてください。ヘアラインのものを磨いた場合は、筋目が崩れてくもって見えているのかもしれません。
多くは「もらいサビ」です。缶や鉄の道具を置きっぱなしにすると、そのサビがステンレスに移ります。早めなら、原因の金属をどけて、メラミンスポンジなどで筋目に沿って軽くこすれば落とせることが多いです。放置してステンレス自体のサビに進むと、落ちにくくなります。
シンクの石けんカスなら、クリームクレンザーで筋目に沿ってこすれば落ちます。ただ、粒子の粗いクレンザーは、鏡面仕上げに細かな傷をつけてくもらせるおそれがあります。鏡面のマフラーや装飾パーツには、粒子の細かい液体研磨剤を使ってください。
まとめ
まず仕上げを見て、鏡面なら微粒子の液体研磨剤、ヘアラインやツヤ消しなら鏡面用の磨き剤は使わない。水あかや油汚れは、磨く前に洗剤で落とす。マフラーの焼け色は数回試して、色が動かなければ深追いせず、専用剤か業者に切り替える。
迷ったら早見表①に戻り、目立たない場所で試してから全体に進めてください。


