ピカールで番手が公式に公表されているのは、エクストラメタルポリッシュの#8000(平均粒径0.8〜1μm)だけです。ピカール液・ケアー・ネオ・ネリ・ラビングコンパウンドには、メーカーが公表した番手の数値がありません。
ただし大まかな序列は確認できます。メーカーが説明しているのは、ネリが液・ケアーより粗いこと、ネオが液と同等の研磨力であることの2点。粗い側にネリとラビングコンパウンド、中間に液/ケアー/ネオ、最も細かいのがエクストラという並びです。なお、ネリとラビングコンパウンドのどちらが粗いかは、資料によって説明が分かれます。記事は2026年8月時点の調査に基づきます。製品仕様は変更される場合があるため、最新情報はメーカー公式サイトをご確認ください。
ピカールの番手・粒径早見表【種類別】
「情報の出所」の列を必ず見てください。ここを混ぜて読むと判断を誤ります。
| 製品名 | 形状 | 平均粒径 | 番手の目安 | 情報の出所 | 向く工程 |
|---|---|---|---|---|---|
| ラビングコンパウンド | クリーム | 約15μm | #1000前後 | 解説記事・ユーザー投稿の推定 | 深い傷取り・厚いサビ落とし |
| ピカールネリ | 半練り | 約10μm/20〜30μm(資料により差) | #600〜2000(資料により差) | 解説記事と流通サイトで不一致 | 白化・頑固な汚れの除去 |
| ピカール液 | 液体 | 約3μm | #4000〜5000前後 | 販売店FAQ・解説記事(公式サイトでは未確認) | 汚れ・酸化皮膜の除去、ツヤ出し |
| ピカールケアー | クリーム | 液と同等 | 液と同等 | 同成分とメーカーが明記 | 小面積の部分磨き |
| ピカールネオ | 液体 | 液と同等 | 液と同等 | 研磨力をキープとメーカーが明記 | 室内作業・においが気になる場所 |
| エクストラメタルポリッシュ | 液体(油性) | 0.8〜1μm | #8000 | メーカー公式が数値を公表 | 硬質金属の仕上げ・鏡面磨き |

表の数値は、粗さの順番を確認するために使ってください。推定値どうしの1段階の差に意味はありません。
いわゆる「赤缶」はピカール液のことです。缶を振ってから布に取るタイプを指しています。
なぜ番手が公表されていないのか
番手が見つからないのは、メーカーが公表していないからです。
日本磨料工業の公式Q&Aでは、ピカール液とピカールケアーは同じ成分で、液体かクリーム状かの違いだと説明されています。ピカールネリについては、研磨剤の粒度が粗く頑固な汚れ落としに向く、という書き方をしています。ピカールネオの製品ページにある表現は「元祖ピカールの研磨力をキープ」。においだけを削減した、という位置づけです。
粒度の粗さには触れていますが、番手の数値はありません。

例外がエクストラメタルポリッシュです。この製品だけは#8000・平均粒径0.8〜1μmという数値がメーカー公式に明記されています。硬質金属向けと用途を絞った製品だけが、数値を出しています。
ネット上の番手情報が食い違う理由
情報源を複数当たると、同じ製品でも数字がずれていることに気づきます。調査で確認できた食い違いを並べます。
| 製品 | 情報源A | 情報源B | ずれの幅 |
|---|---|---|---|
| エクストラ | メーカー公式:#8000 | 一部の解説記事:#10000相当 | 番手表記で2段階 |
| ピカール液 | #4000相当(砥石系情報サイト) | #5000相当(複数の解説記事) | 1段階 |
| ピカールネリ | 約10μm・#1500〜2000相当(解説記事) | 平均粒径20〜30μm・番手目安#600(流通サイトの商品ページ) | 粒径で2倍以上、番手は逆方向 |
ネリの例は深刻です。解説記事は約10μmで#1500〜2000相当とし、流通サイトの商品ページは平均粒径20〜30μm・番手目安#600と表示しています。粒径で2倍以上の開きがあるうえ、番手に至っては粗い側と細かい側で向きが逆になっています。
原因は単純で、番手はもともとサンドペーパーの規格だからです。液体やペーストの研磨剤に当てはめるための統一ルールは存在しません。粒径をμmで示すのが実態に近く、番手はあくまで「たとえるなら」の話にとどまります。
同じ粒径でも、削れ方は変わります。ペーパーは粒子が紙に固定されているため角が食い込みますが、ピカールの粒子は油の中を転がります。同じ粒径のペーパーより、仕上がりは穏やかになります。
数字が食い違ったときは、粗い側の数字を採用しておくと安全です。仕上がりが甘くなることはあっても、削りすぎる事故は防げます。
磨いても鏡面にならないのは番手選びが原因
「ピカールで磨いても光らない」という声の大半は、製品の性能ではなく、選んだ番手とその順序に原因があります。
細かい番手では下地の傷は消えない
エクストラの0.8〜1μmという粒径は、金属をほとんど削りません。削らないから傷をつけずに済むわけですが、すでにある傷を消す力もありません。
当店のお客様レビューにも、この特性がそのまま出ています。「軽く擦っただけでは全然ダメだったが、よく擦り込んで最後にマイクロファイバーで拭き上げたらピカピカになった」

深い傷や厚い酸化皮膜が残った状態でエクストラを使っても、傷の谷は埋まりません。表面が少し光るだけで、映り込みは出ないままです。
番手は飛ばさず、一段ずつ細かくしていきます。#1000相当から一気に#8000へ飛ぶと、#1000の傷跡が残ったまま表面だけが磨かれます。仕上げ用だけを使っても、鏡面にはなりません。
当店のレビューには、工程を分けている実例がいくつもありました。「ピカールである程度磨いた後に仕上げとして使った。単体でも使えるが、仕上げに使うと光沢が安定する」。別のレビューでは、汚れがひどい場合は先に研磨力の強いもので磨いてから仕上げにピカールを使う、という順序が紹介されています。
布で手磨きする場合の現実的な工程
解説記事の中には、電動バフを毎分2000回転前後で回す、表面粗さ測定器で管理する、といった手順を紹介するものもあります。当店のレビューを見ると、電動工具に触れたものはごくわずかでした。手磨きが前提と考えて差し支えありません。
手作業を前提にした場合、流れはこうなります。
- 砂や泥を水洗いで落とす(残っていると傷の原因になります)
- 白化やくすみが強い箇所は、粗めの製品で下地をならす
- ピカール液で全体の汚れと酸化皮膜を落とす
- エクストラを少量取り、面を分けて磨き込む
- 乾いたマイクロファイバークロスで拭き上げる

くすみが軽ければ、2と3は飛ばしてエクストラだけで足ります。判断の分かれ目は、傷が指の爪に引っかかるかどうか。引っかかるなら下地工程が要ります。
対象物別・どの番手を選ぶか早見表
対象物によって、選ぶべき番手の起点が変わります。
| 対象物 | 状態 | 起点となる番手 | 仕上げ |
|---|---|---|---|
| 鋳造アルミホイール | 白化・くすみ | #1000〜2000相当 | #8000(エクストラ) |
| 鍛造アルミホイール | くすみ | #4000〜5000相当(液) | #8000(エクストラ) |
| ステンレス(タンク・マフラー) | 焼け・くすみ | #4000〜5000相当(液) | #8000(エクストラ) |
| 硬質クロームメッキ | 点サビ・くすみ | #8000のみ | #8000(エクストラ) |
| 装飾クロームメッキ | — | 研磨しない | — |
| 真鍮・銅 | 黒ずみ | #4000〜5000相当(液) | #8000(エクストラ) |

メッキは、判断を誤ったときの代償が大きい対象です。装飾クロームのクローム層は一般に0.1〜0.5μm程度と非常に薄く、粗い番手で磨き過ぎるとクローム層を削り、下地のニッケルが露出するおそれがあります。削ってしまった場合、通常の研磨だけで元の状態には戻せず、再めっきが必要になります。硬質クロームか装飾クロームか判断がつかない場合、装飾クロームだったときの損失の方が大きくなります。
素材ごとの可否をより詳しく確認したい方は、素材別の判断基準とタイプ別の比較をまとめた金属磨きの選び方をご覧ください。メッキの層構造や、コーティング施工済みホイールの扱いまで整理しています。
塗装用コンパウンドとは別物です
ピカールは油性ベースで、石油系溶剤を含みます。塗装やゴムに付けばシミや膨潤を起こします。
一般に「コンパウンド」と呼ばれる製品の多くは、自動車の塗装面用に設計されています。ピカールは金属素地用で、設計している対象が別です。金属パーツの周囲に塗装や樹脂があるなら、マスキングしてから作業してください。
現場ではどう使い分けられているか
当店では金属磨き剤を累計4,000本以上出荷しており、そのうちピカール エクストラメタルポリッシュが約4割を占めます。番手が公表されている唯一の製品が、最も多く出ています。
エクストラのお客様レビューは116件、平均★4.8。使用対象で圧倒的に多いのはホイールで22件。次いで、トラック・ダンプ・バスといった大型車の外装が18件です。アルコア製のアルミホイールを磨くのに使っている、という具体的な声もありました。
伸びの良さに触れたレビューが10件。拭き取りのしやすさへの言及も10件でした。ただしこの2つは同じレビューの中で並べて書かれていることが多く、重複を除くと16件が「塗って、拭く」という一連の作業のしやすさを評価しています。
他社製から乗り換えたという声が3件、リピート購入に触れたレビューが5件。複数本セットの受注も全体の約5%を占めます。
対象物としては、燃料タンクやエアタンクといった大型車の外装部品が続きます。バイクのマフラーやキッチンのシンクも出てきますが、こちらは数えるほど。#8000という細かい番手は、下地が整った面の仕上げに使われています。
エクストラが向かない場面・購入前の注意点
エクストラで解決しない場面は確実にあります。
まず、使えない素材があります。塗装やコーティングなど表面処理を施したもの、貴金属、クロームメッキ以外のメッキ、ヘアラインやツヤ消しなど特殊な表面処理を施したものには使用できません。ヘアライン仕上げのステンレスを磨けば、目が消えて見た目が変わります。
深い傷や厚いサビにも力不足です。0.8〜1μmでは削れる量がごくわずかで、爪に引っかかるレベルの傷があるなら、先に粗い番手で下地を作る工程が必須になります。コーティング機能も持ちません。磨いた後の保護膜は形成されないため、屋外で使う車両では再びくすみが進みます。
お客様レビューには率直な声もあります。★3の評価に「本当のピカールの方が艶は出る気がします」というものがありました(当店注:ここでの「本当のピカール」は、缶入りのピカール液を指すものと思われます)。拭き取りが難しかったという声、容器のフタの閉まり具合を指摘する声もありました。
研磨力とコーティング機能のどちらを優先するかで迷っている方は、ピカールとブルーマジックの違いを金属別に整理した比較記事が判断材料になります。ホイールを鏡面まで仕上げる具体的な手順は、ブルーマジックによるホイール鏡面仕上げの手順で解説しています。
よくある質問
まとめ
公式に数値が出ているのはエクストラの#8000(平均粒径0.8〜1μm)のみ。他の製品は第三者による推定値しかなく、その推定値も情報源によって食い違います。数字を絶対視せず、シリーズ内の粗さの順番で判断してください。
下地を整えずに細かい番手だけを使っても、鏡面にはなりません。
まずは爪を立てて、傷を確かめてください。爪に引っかかる傷があるなら、粗い番手から始めます。白っぽく曇っているだけなら、エクストラ1本で足ります。


